1,Jun.04 (火) 14:06
彼女は常にわたしにとってのアンチテーゼだった。

彼女は彼女の常識の世界に生きていた。
わたしはそんな常識が嫌いで仕方なかった。
彼女にはクラッシックこそ最高の音楽だった。
わたしの好きなロックは一時的な流行としか認めなかった。

高度成長期の日本人の価値観をかたくなに信じていた。
わたしはそれを押し付けられる事の息苦しさに喘いでいた。
そう、わたしの家出は彼女の信じる社会への反抗などではなく、
そこからのエスケープだったのだ。

今彼女は酸素を肺へ送る管と計器の信号線、点滴でベッドの上に身体を固定され、うつろな視線をわたしに向けている。
見えているんだろうか?
そう見えているよね。
わたしはただ、そのひたいに手をおいて、そっとつぶやくだけ・・・

頑張って、おかあさん・・・