11,Sep.04 (土) 01:46
「それは一粒の芥子種のようなものである。 すべての種の中で最もちっちゃなものである。 しかし、それがこしらえられた耕土に落ちると、大きな草木となって空の鳥たちの避難場所となる」(トマス 20)

言葉が発火した。 確かにそれを知っているような気がする。 中枢神経という沃土にこぼれ落ちた種は、至福という刺激で神経樹の枝えだを駆け上がり・・・まるで草木の成長を早まわしの映像で眺めるように・・・末端までの神経系にまで行き渡り・・・そして発火する。

ロクさんが笑い出す。 「お前さん、自分のドラッグ体験と同じにしちゃいないかね」 苦笑いをこらえながら・・・方法じゃなくって結果だろ・・・「そうさね、『天国』ってヤツに入りたいなら、それもいいさ。 でもそれが全てってんじゃ、ナニかおかしいだろ」

男は女の愛を得る為に、真冬の真夜中に吉祥寺から環八を経て三茶まで歩きづめ、アパートのドアの前で彼女の帰りを待つ。 北風と冷え切ったコンクリート・・・でも喜びに脈打つ鼓動。 今夜、彼女は帰ってこないかもしれない。 でも待つことに不安はない。 今できる事はそれが全てだから・・・

「それは一粒の精子のようなものさ。 数億の中のたった一粒なのに、卵子にたどり着いて、その中への侵入に成功すれば、やがて細胞分裂を繰り返して霊長類へと成長する」・・・そうさ、そして僕らは生まれた・・・