30,Nov.04 (火) 02:58
おれたちはその角を曲がって、ネオンの灯りが怪しい通りへと出た。
こんな時間だってのに、まだ遊びたりないって顔の男や女たちが溢れ出しては、嬌声を撒き散らしながら、また店の中へと消えていく。
そんないくつもの店の前を通り抜け
・・・オレは思ったね、こいつらどこにまだこんなに時間のストックを持っていやがるんだって・・・

時間配給公社が、まるでデタラメなスケジュールを配布しだしたのは、今に始まったこっちゃない。
特におれたちシニア・クラスにはひどいもんだ。
仲間がいうには「押し付けやすい所には容赦がない」って事だが・・・
確かにこんな時間だってのに、せかされて次のスケジュールに急ぎ足だなんて、どこか狂ってる。
いっそ、あの若造をひっつかまえて、タイム・チップを取り替えたい気分だぜ。
かまうこたねえ、まだその値打ちもわかっちゃいないんだから・・・

若造は取り囲んだおれたちの顔を順繰りに眺め回すと・・・ヘラヘラと笑いながら自分のふところから自分のタイム・チップを取り出すと、笑いながらそれを足元に落として・・・ブラブラしながらもそれを靴で踏み潰した。
ヤツの顔が蒼ざめる。
死がこんなにも簡単になっちまったなんて、さすがノーベル賞もんだぜ。
もう死後硬直を始めた死体を取り囲んだおれたちは、溜息すら出やしない。
いや、こんな事に時間を潰しちまった愚痴しかありゃしない・・・

結局おれたちはまた急ぎ足で、歩き出した。
今度はもっとうまくやるぜ。
いや、せめて次のスケジュールをこなした後は・・・