19,Nov.05 (土) 01:15
 僕らは若かった。 せめて自分のしてる事は自分で始末できると過信するほどに・・・
 留置所の雑居房では、それぞれに一枚のゴザがあてがわれ、排泄はその奥のドアもない剥き出しの便器で用を足すんだが・・・小便ならまだしも、大便ではさすがに尻を剥き出しってわけにもいかず・・・それでそのゴザを背中から囲うように背負いながら用を足す。 毎日規則正しく配給される弁当を、規則正しく排泄する為に・・・
 僕はその頭上数10センチ四方の鉄格子の窓に耳を澄ませて、音を探していた。 聞こえるのはエアコンのモーターの回転音だけ。 その音程にあわせながら、三度、四度の和音をクチずさみ・・・看守や同房の、なんども出たり入ったりを繰り返す、いわゆる懲りない面々の怪訝な視線も気付かぬフリをして・・・
 連中が小声でしゃべりだす。 昨夜入った男は強姦だってよ。 可哀想に、そりゃ刑務所じゃイジられるね。 シャブ切れのヤツが騒ぎだす。 看守が鼻を鳴らす。 イヤ実は男だと思ったんだが、裸にしてみたらオンナでね、布の繰るんだ一物をあそこに突っ込んでやがってさ・・・人間の尊厳ってヤツを本当に知りたければ、こんなに最適な場所はない。 普段は当然な事が、そうじゃないんだから・・・
 僕は再度エアコンのモーター音に波長を合わせて、音程をもてあそぶ。 Oh Mother, Look what they've done to me...