Alice in a maze
夕闇がせまる公園の迷路の真中で
アリスはしゃがみ込んでいる
一緒に遊んでた友達はみんな迷路から抜け出せたのかしら
ひとり取り残されたアリスは心細くなって
友達の名前をひとりづつ呼んでみるのだけれども
返ってくるのはカラスのカアカアって鳴く声だけ
それでもやがて
アリスの声を聞きつけた南風がやってきて
お嬢さん、そんなところで誰を呼んでいるの?
南風さん、わたしはこの迷路から抜け出して
早くおうちに帰りたいのだけれども
どうすればいいかわからないのよ
南風は腕を組んで考え込むと
そうだね、迷路の抜け出し方を教えてあげよう
いいかい右手を壁に付けたまま
ずっと歩いて行ってごらん
アリスは親切な南風にお礼を言うと
言われたとおりに右手を壁に付けたまま
迷路の中を歩き始めたのだけれども
でも幾つカドを曲がっても出口は見つからない
それにここはさっき通ったところじゃないかしら?
疲れてきたアリスはだんだん南風を疑いだして
南風さんはわたしをからかったんじゃないのかしら?
今ごろは馬鹿な娘だって笑ってるに違いないわ
そう思うと悲しくなってきて
しゃがみ込んで泣き出してしまった
今度は北風がその泣き声を聞いてやってきて
お嬢さん、そんなところでナニを泣いているの?
アリスは迷路から抜け出せないでいること
それから南風が抜け出す方法を教えてくれたけど
いつまでたっても出口が見つからない事を北風に話すと
ヤレヤレ南風はなんてウソつきなんだ
迷路を抜け出す時は右手じゃダメなんだ
左手を壁に付けたまま歩くのが本当の方法だよ
なんだ、そうだったの
北風が笑いながら去っていくのにも気づかずに
アリスは今度は左手を壁につけて歩きはじめ
でもやっぱり全然出口は見つからないし
それにお空はもう夜になっていて
足元が暗いものだから
十字路のところで小石につまずいて
お尻からころんでしまい
アイタタ! って左手でお尻をさすりながら
あら、わたしったら壁から左手を離しちゃったわ
もうどうしようもなく心細くなったアリスは
大声で泣き始め
あまりに大きな泣き声に
びっくりしたモグラが地面から顔をだして
お嬢さんなんでそんなに大きな声でないてるんだい
アリスは迷路から抜け出せないでいること
それから南風が抜け出す方法を教えてくれたけど
いつまでたっても出口が見つけれなかった事
それから北風も方法を教えてくれたのだけれども
今度は暗くてころんでしまった事を説明すると
まったく地上の連中はこれだから困ったもんだ
いいかいお嬢さん
道に迷った時は見晴らしのいい場所に出て
道を確かめるのが一番だよ
でもモグラさんここで見晴らしのいい場所ってどこなの?
そうさね、あの壁の上かな
わたしひとりじゃあそこに登れないわ
といわれても・・・オレの力じゃ無理だし
誰かに助けてもらうんだね
そういうとモグラはまた地面の穴の中に戻っていってしまい
こんな真夜中に
誰が助けてくれるというのかしら
でももう一歩も余分には歩きたくないし
アリスは大声で助けを呼んでみると
ダレが聞きつけたのだろうか
迷路の外から優しそうな声で
お嬢さんナニを手伝って欲しいんだい?
アリスは大声で
迷路を抜け出す為に壁の上に登って
道を確かめたいのだけれども
一人じゃ壁に登れないの
そんならお安い御用さ、声さえ出していてくれれば
オレさまがそこまで行って
お嬢さんを背中に乗せてあげるよ
途方にくれていたアリスはうれしくなって
その優しい声の主に、こっちよ、こっちって声を出して
やがてアリスの前に現れたのは
目を真っ赤にしてハラをすかした狼
気づいた時はもう遅かった
狼はアリスをひとくちで食べてしまい
さて翌朝になって
いつまでも帰らないアリスを探しにやってきた村人達が
迷路の中で見つけたのは
歩き疲れてヘトヘトになっている狼が一匹
自分に向けられた村人達の銃を見て
狼は小声で愚痴た
なんてこったい、こんなことなら
食べちまう前にあの娘を背中に乗せて
迷路の抜け出し方を見つけておくんだった