BUMS in RAGS
わたしの故郷には今でも路面電車が走っている 中学生の頃わたしはその路面電車に乗って通学していた その頃の事を思い出すと、わたしがいつも周囲に感じていた緊張感って一体何だったんだろうって考えてしまう 別に怖い事があった訳じゃない・・・ ただ電車に乗る事ひとつにしても・・・ それが前から乗るのが正しいのか?後ろから乗るのが正しいのか・・・ 定期はどのタイミングで車掌に見せればいいのか・・・ 吊革にかける手は右手がいいのか、それとも左手なのか・・・ そんなどうでもいいことに神経を昂ぶらせていた |
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何故か間違うって事がとてもいけない事の様な気がしていて・・・ それでいて、何が正しい事なのかわからずに・・・ いつもまわりを見渡しては、そうだこうすればいいんだって考えながら・・・
でも本当は今だけこうなので、本来は違ったふうにしなくてはいけないんじゃないだろうかって そしてまわりで余裕顔で腰掛けている人達を見ながら・・・ きっとこの人達は何が正しいのか知っていてこんなに落ち着いていられるに違いないと それってコンプレックスなのだろうか?・・・ 言葉を知らないみたいに黙りこくって・・・ でもこころの中ではどうすれば正しいのかをさがしあぐねている・・・ |
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ボンド遊びに手を出したのはその頃だ ただでさえ何もいえずにモジモジしてるわたしには、自信満々の優等生よりはどこかスネてる連中といる時の方がこころは落ち着いた 彼らがかくれて吸ってる煙草を分けてもらい・・・ そして秘密の集まりにさそわれて、ボンドを経験し・・・ 時代は60年だい後半・・・ 当時の非行少年の典型的パターン・・・ でもそれは何も誰かにそうさせられたってワケじゃない・・・ それが自分にとって一番自然な次へのステップだったのだから |
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わたしは何を見ていたのだろう? ・・・ 常に介在する周囲との緊張・・・ でもそれこそは自分の中にある幻想にしか過ぎないのでは?・・・ 目の前の友人はわたしと同様にこの刺激臭の中にやすらぎを得ている・・・ 彼とてもわたし同様に自分の弱さをさらけ出し・・・ そしてそいつはどんな自信満々なヤツよりも素敵な言葉をもっていた わたしもまたすべり落ちていこうじゃないか・・・ 自分というブラック・ホールの中へ |
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小さなビニール袋は、完全に安定しきっているように見える世界から、唯一わたしに呼吸を与えてくれる空間・・・ こね回している袋の中に自分の世界を閉じ込めては・・・ それが溶けてカタチをくずしていくサマにこころをうばわれて・・・ 逃避と捉えるならそれでもいい・・・ でもわたしがそこで見ていたのは幻想じゃない、わたし自身のこころだった・・・ 誰にだって自分にたちむかわなくっちゃいけない時ってある・・・ わたしにはこの火遊びがそれだったとしても・・・ |
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そんなで高校受験を一年ミスちゃったわたしは一年遅れで入った進学校の中で、一番遅く登校して、そのうえ途中でいなくなっちまう生徒になり・・・
そしてほどなくその高校の最初の自主退学生としてドロップ・アウト ギターをかき鳴らしながら自分の不安を叫びあげ・・・ 気がつくとそんなウタを聞いてくれるヤツがまわりに集まって・・ |
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そしてある日昔しのボンド仲間がライブの会場の楽屋に遊びにきてくれた ヤツは身体じゅうから薬品のにおいのする汗をかいて・・・ 手は震え・・・ しばらく落ち着いた表情を保ちながら・・・ 次の瞬間に自分へのありもしない批難の声にこころをかきむしられ こころはこわれていた |
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ヤツはカバンから、病院で強制的に渡された山のようなクスリの束袋を開け こころを落ち着かせる為に、手にした紙コップの中の水と一緒に その粉末と錠剤を次々と口の中にほおり込み やっとの思いでわたしに微笑みかけていう |
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可哀相なアイツ 身体はわたしよりよっぽどしっかりしていたのに それともアイツはわたしの狂気を引き継いで、 |
9,Sep'99 by seven