競馬の予想屋の口上

ニイチャン・・・夢は滅多に果たせないから夢っていうんだ
でもね、宝くじが当たる事なんて滅多に無いけど
買わない事には当たりはしないだろ
夢も一緒だよ
・・・」

成る程おっさん、さすがにいいこと言うね
でもそれってアンタの予想は宝くじなみって事かい?


明日やめるって言って、本当にやめたひとなんて居ないわ
彼女は焦点を結ばない視線を彷徨わせながら
だって今しかないんだモノ
男の悪癖にジレた口調で
明日はいつまで経っても明日よ

浅い眠り
何度も眼を開け
あと何時間眠れるかと目覚まし時計を見ては
・・・
再度眼を閉じて
意識の霧散を待ちわびている
・・・
そんなこころを乱すのは
・・・
きみは幻想だといって蛍光灯を点ける
ホラなにもないじゃない
そうじゃない、夢は幻想とは違うんだ
僕は眩さに眼を細めながらも
・・・
ジーという電磁波のノイズ
今はまだ無意味かもしれないけれど
・・・
ブーンという冷蔵庫の唸り音
今はまだ幻想かもしれないけれども
・・・

今すぐやめろだなんて言い出さないでくれよ
男はそれを大事そうにくるみながら
有るウチは味わうもんだぜ
彼女の非難めいた視線に戸惑いながらも
どうせいつかはなくなる生命だもの


浅い眠りのけだるさの中で
僕はきみとのこころの距離を測ってみていた
絶望的って程じゃないけど
可能性がないわけじゃないけれど

そこで皮肉屋が起き出して戯言
 「きみの愛はキリスト教徒程に純粋でも、ディオニソス程にも享楽的でもない
そりゃそうさ
わたしはあいつの首根っこをつかんで言ってやった
ありがとうよ、本物ってのはそんなモンさ
皮肉屋はヤレヤレって顔でこう切り替えした

だがね
・・・本物の夢は必ずかなうモノだぜ・・・