全ての亡霊どもを呼び戻せ・・・

係員が渋い顔で俺に宣言する
「作業着のサイズはLとXLの二つと決められてるんだ」
列の後ろのヤツラは待ちくたびれた恨みを俺にぶつけて
「今時こんなチビは滅多に居ないぜ」
見えない大多数がつぶやく
「少しは空気を読めよ」
クソ係員もニヤけて
「さあおチビさん、Lで我慢しな」
群集は共通の敵を求める
いつも今夜の生贄は誰かってピリピリしてるんだ

俺はあきらめてブカブカの作業着に着替えると
作業場へのエレベータに押し込められ
・・・
仕事は簡単さ
右の部品を左に移すだけ
眼をつぶってても出来る
でも手首から先を旋盤の餌食にしたヤツを知っているぜ
簡単な仕事ほど危険
世の鉄則さ
眠くなるのが人間の生理ってもんだろ
俺は金屑だらけの軍手で眼をこすりたい衝動にかられながら
単調な機械のビートに同化する
ここじゃそれが一番大事な技能さ
ヒリヒリとした鉛のような眠りへの誘惑
・・・
誘惑?

俺の妄想が滑り出した
ヤツはベルトコンベアの下から煙のように湧き上がると
薄汚れた女に姿を変えて
俺の下半身にへばりつくと
作業ズボンのベルトを外して
パンツの中からコックを抜き出し
それをゆっくりと扱き出す
俺の妄想は俺の快感を操りながら
俺の耳元にささやく
「さあ眼を閉じてわたしの慰めを楽しみなよ」
女の顔に意地悪い笑みが浮かび
「ほら、こんなに勃起してるじゃない」
淫靡に目を輝かせると
「少し食べて上げようか」
思わず女の口を見た瞬間
俺のこころは悲鳴を上る
そうともヤツは金属のキバで噛みつこうと
大きく口を開けながら
・・・