ねえ、きみは現実なの?

もう幻想を共有できる時代じゃない

生命と非生命は
「なろうとするもの(will be)」と
「なろうとしないもの(not will be)」で
区別されるんだって

渋谷のスクランブル交差点で
すれちがうあんなに多くの人達の中で
でもその中には知り合いのひとりすら居ない
って事に気付いた時のように

チャンネルを変えてみる

青い海、白い砂浜
潮騒の音
風・・・

え? 風?

ブラウザに映し出された絵の上で
耳を澄ます
違うよ
アレはエアコンの音
エアコンの風
眼を開けろよ・・・

オフィス・チェアーの上で
意識は硬直した身体を起こそうとするのだけれども・・・
乾いた眼は外の景色が嫌いだ
眼を閉じる

ねえ、僕は現実なの?

アミーバーの愛

この管状生物は自分の重みにも耐えられずに内潰していく
ブラックホールの底で叫ぶ声は
でもその変位点にも届かないよ

アルミホイールの上で蟻をあぶってみたことはあるかい?
すぐに黒い砂粒みたいになっちゃうんだ
雄のライオンはハーレムを獲得すると
前の主の子供ライオンを全部噛み殺してしまうんだって

死はそれを受け入れる側の者には恐怖だが
与える側は時としてそれを愛とさえ呼ぶ

さあ愛をもってそのステーキに噛り付け

・・・吐き気・・・

ねえ、きみは現実なの?

ドコにも存在しない場所ってドコのこと?

彼女はちょっと考えると

簡単よ!
"Now Here" つまり "今ここ"

引き寄せたきみの口唇に口を重ね
僕は舌でその「ドコにも存在しない場所」を探し回る
時間が意味を持つのは別れの時間だけ
階の半分は照明の消えた高層ビル
人通りの途絶えた公園通り
耳には木立の向うからの高速で渋滞する車の排気音

でも
今、ここでは・・・
でも“今ここ”が存在しないのなら
一体どこに・・・

僕らはお互いのクチを抑えて

勿論、"NoWhere" ドコにも

ねえ、僕らは現実なの?