port
港へは30分程で着いたんだが
店主は彼をバイクから降ろすと埠頭の方を指して
「あそこでなんとかすれば魚にありつけますぜ」
と言い残してバイクを転がしていってしまった
なんだよ紹介してくれねえのかよと憮然としながらも
それになんとかってナニするんだよ、まあしかし
とその埠頭の方へと歩いていくと
漁港では漁船に網をつんでいる最中で
皆が忙しそうにしている、その漁師のひとりに
「旨い魚が食えるときいて来たんだけど」と尋ねると
漁師は冷たく笑って
「アンタ目があるんかい、これから漁にでるところだぜ」
確かに漁具はあっても魚の影はなく
しかし腹の減り具合もかなりで
それでもなんとかと、屋台の店主にきいたんだがと言うと
「あの爺さんまた適当な事を言いやがって」と顔をしかめ
「なんなら一緒に漁にでるなら漁師飯くらいは食わせてやるぜ」
いやさすがに漁船に乗れる程の体力はない
すると漁師は「じゃ死ぬまでそこでまってんだね
だってとりたての魚は先ず都会の魚市場に卸して
残った分が俺たちの朝飯なんだから」
漁船はにべもなく出港していき
とんだスットコドッコイだよと残された彼は
空腹と戸惑いに呆然としながら立ち尽くしていると